2018年8月7日火曜日

金沢の近代建築(4)旧三田商店 旧村松商店 田上医院

金沢の近代建築(3)の続きで、続いて尾張町の橋場町交差点近くの角にある「旧三田商店」は、昭和5年に建設されたもので、鉄筋コンクリート造りの2階建てである。設計、施工は当時金沢に営業所を開設したばかりの大林組がやり、たった2か月で造ったといわれている。



















ここの特徴は、建物が立方体に近いが大通りに面する角を丸めて、正面玄関がある。この建物の意匠の見どころは、この玄関付近である。1階はコンクリート式柱頭やビン型飾りを配し、玄関欄間に松明を掲げる婦人像の図柄が入ったステンドグラスがある。また、2階は、石の窓枠を積み込みバルコニー風の窓台がある。その内側へ傾けた鉄製の手すりがあり、窓上の持ち送りや蛇腹の組み合わせからなるバロック風の意匠で、なかなか凝っている。





































また、壁面はチョコレート・ブラウンのスクラッチタイルが貼られ、柔らかく落ち着いた雰囲気である。



















建物の中は壁や天井さらにシャンデリアも洒落ている。現在は、漆の茶碗やお皿、九谷焼などの器が並べられたギャラリーとなっている。




















「旧三田商店」の横の路地を少し行くと、また,洒落た近代建築の建物がある。ここは、尾張町の中でも老舗にあたる糸卸小売商の「旧村松商店」の自社ビルとして1928(昭和3)年に建てられた。鉄筋コンクリート造2階建てで、地元の建築家の設計で、民間の鉄筋コンクリート造としては早い時期の個ものであるという。
外観は、現在い白っぽいさを基調のした壁になっているが、かってこの建物も派手な建物だったらしく、金沢でも異色のものだったという。



















その面影は、せり出した碧色のタイルの帯が壁面を縁取り、分割して上下に走っている。 また、元来壁の上や軒処理に用いられる蛇腹の縦型のデザインが石造りのように見えるアール・デコ調の外観である。



















屋上を縁取るタイル内部には、かって電球が埋め込まれ、イルミネーションとして金沢の夜を彩っていて、町の話題になっていたというからどんなだったか見たかったものだ。しかし、戦時中の灯火管制で消灯を余儀なくされ、さらに金属供出として電球の金具まで取り出されたという。その面影がわずかに残っている。



















さらに奥のクランク状に曲がったところに「田上三雄住宅」の建物がある。ここは、「お医者さん」の住宅で、すぐ近くに診療部分の建物がある。右側の玄関がある部分は壁が多いが、それ以外は大きな窓があって、開口部が多い。以前は左端1.2階ともベランダがあったが、取り外されている。



















玄関部分の脇窓や門灯にグリッドは入り、下方のブルーと黄色のタイルの縞模様、階段のタイルのコントラストも素晴らしい。



















大通り側に面して「田上医院」がある。どちらも洋風であるが、ちなみにこの建物の医者は、ドイツ留学を終えて、帰国が直ちにこれを建設し、細かな支持を設計者に与えたというから、ドイツ風のモダニズムを反映しているという。





















金沢市内の古い街並みの中に「お医者さん」だったのかなあと思われる建物が、現在は開業していないが、当時のままの状態でいくつか残っている。