ここに「馬坂」の標柱があり「昔、田井村の農民が小立野へ草刈りに行くため、馬をひいて登ったのでこの名がついた。六曲り坂ともいわれていた」とあった。つまり六つの曲がりがあるのだ。いくつも折れ曲がる道を「七曲り」といわれるが、偶数の六曲がりなのが面白い。
上がっている途中に振り向くと、卯辰山から浅野川の下流方向に広がった街並みの眺望がすばらしい。
先が見えない曲がった「く」の字の角に「馬坂不動尊」と描かれた額を掲げた「お堂」がある。
ここには、不動明王が祀られていて「馬坂不動尊」と呼ばれていて、その真ん中には竜頭の筧(かけい)があり、湧水が落ちている。これは、昔、田井村の農民が馬を引いて小立野に上がる際に、馬を休ませ、息継ぎのための給水地点の場所だったという。また、この湧水で目を洗えば、眼が回復したという言い伝えがあるという。
「お堂」の近くになんて書いてあるかは分からなかったが、古そうな曰くのある石物のようだった。
さらに上に上がると坂と階段が並んでいる。最高斜度は26度で、長さは168mということで、結構息が上がってしまう。
坂をのぼりつめたところに寺院群が現れるが、その手前に十体の石地蔵が並んでいた。
その隣には「一つ灸」で有名な高原院がある。ここは、1641年(寛永18年)、御開山・春堯和尚は、当初、大豆田に当寺を建立した。春尭和尚が加賀藩初代藩主・前田利家の息女・福姫の縁者として取り上げられたことから、その報恩供養のために建てられた。「高源院」とは、福姫の戒名を取ったものである。1659年(万治2年)に当地に移転したという。
ここは、私の親戚の人の菩提寺で、法要の時に入ったことがある。
金沢三十三観音巡りの第29番の札所で、毎年7月1日に無病息災を祈願する人で溢れる「一つ灸」が行われる。