東京(4)品川神社② 御殿山原庭園の続きで、その後、目黒駅から歩いて12分くらいの「東京都庭園美術館」に行った。
ここは、アール・デコの建築意匠が完全な形で残る建物で、旧皇族浅香宮の邸宅として1933(昭和8)年に竣工され、1983年に東京都庭園美術館として一般に公開されたという。
鉄筋コンクリート造、縦長のサッシ窓が水平に連続する、フラットルーフのシンプルな外観である。
鉄筋コンクリート造、縦長のサッシ窓が水平に連続する、フラットルーフのシンプルな外観である。
入口がアーチ状になった車寄の両側に、神社の狛犬のような獅子が置かれていた。
この浅香宮邸の建設を中心となって進めたのは施主の浅香宮夫妻であった。1922(大正11)年から3年間に渡りパリに滞在し、1925年のアール・デコ博覧会を見学された。この博覧会主要パビリオンの室内装飾で手腕を振るったフランス人ラパンを起用して、パビリオンさながら「アール・デコの館」を東京の自邸として再現させた。時代を経て現在でもそのほとんどが創建当時のまま残されているという。
戦後は一時GHQに接収されたが、外務大臣だった(後の首相)吉田茂の公邸として使われたという。その後、赤坂離宮が迎賓館として使わるまでは浅香宮邸は国の迎賓館として使われた。そしてその後は、西武鉄道が「白金プリンス迎賓館」として結婚式や宴会場として使われたという。
正面玄関から中に入ると、床には大理石モザイクが敷き詰められている。
床一面に敷き詰められたモザイクには様々の色合いの天然石が用いられる。中央に唐草、周囲をジグザク模様で構成された円形の装飾はイスラムの文様を思わせるという。現場でパーツを作りながら嵌め込んでいく緻密な作業が行われ、ベージュ、グレーの濃淡、ピンク、グリーン、茶など5種類以上の大理石が用いられている。
またその前には、有翼の女性像をあしらったガラスの扉がある。4体の女性像が並んでおり、訪れる人を出迎えるようにガラスパネルから高くせり出している。特に夜間は室内のあかりを柔らかく遠し、より一層輝くという。
南側に芝生が見える「大客室」には、フランスアール・デコの粋が集められている。シャンデリアやエッチングをはめ込んだ扉、壁の壁画などはアール・デコ工芸家によって作られた一つ一つが美術作品ともいえる。