今回は、同じ趣味仲間の友人に誘われて、食談を聞きながら昼懐石が食べられるということで橋場町にある「金城楼」に行った。金沢学院大学主催のゼミナールの一貫で、金沢食文化「食を愛でる」というテーマで行われた。
「金城楼」は1890(明治23)年創業の金沢でも高級料亭のひとつである。東山、主計町茶屋街に近いことから、ここに泊るお客さんたちから芸妓さんが呼ばれて芸を披露することもあるらしい。
第一部はトークセッチョン「美術工芸王国”石川”の食文化」と題して、パネリストは司会が学院大学教授で日本画家、茶道家の平木孝さん、そしてやはり学院大学の先生で漆芸科の市島桜魚さん、一級フードアナリストの雅珠香(あすか)さんであった。
石川県の伝統工芸の中で「輪島塗」、「加賀蒔絵」や「山中漆器」に代表される漆文化の特徴について、市島桜魚先生が分かりやすく説明してくれた。木に漆を塗ったお椀は、熱いものを入れて手で持っても熱くないし、また、いつまでも温かいし、防水性もあり、丈夫であると言う。家に大事に保管されているものも多いと思うが、常々使うべきだといっていた。
また、1年間に600店の店を食べ歩いて紹介している雅珠香さんから、食は観光に欠かせないものであり、石川県や金沢市では今年の2月から新しくできた店が急激に増え、京都などで修行した若手和食料理人さんがこちらに来て、レベルが高くなっているという。
食べ物の味だけでなく店の雰囲気、盛り付けなどいろいろなものを見ながら食べ歩いているという面白い話が聞けた。
平木孝さんからは料理を盛り付ける「器」について、古田織部好みの緑を使った器の影響が大きいことや北大路路山人が石川県で修行し、その後東京で高級料亭を経営した後、自分で料理を盛るための器を作り始めた話などがあった。
続いて第2部として「五感で愛でる、金沢の食」と題して、昼懐石と加賀の菊酒を頂きながら食談を聞いた。そして中村酒造の中村太郎社長から、菊酒は9月9日に菊の花びらが付いたお酒を飲む風習があり、「神仙の飲み物」として強健になるという。「加賀の菊酒」は3つの説があり、白山の菊潤を水源とする手取川の水でつくることから鶴来説と犀川の上流に菊が嶽があり、菊水川と呼んでいる金沢説や加賀全体という説があるという。
ここで出てきたお酒とご馳走について紹介する。
お酒は、中村酒造の純米吟醸「日榮」、純米酒の「加賀雪梅」など甘口や辛口のお酒4種類が出た。どれも飲み心地がよく、ほんわかと気分がよくなった。
前菜として、さば寿司や蟹えびす
お吸い物替わりとして「蟹の茶碗蒸し」
お造りとして「鱈の子付け」
加賀伝承料理「鴨部煮」
焼き物「鰤の照り焼き」
お食事として「加賀野菜の炊き込御飯」と「味噌汁」
デザートとして、能登大納言小豆を使用した「牛乳羹」
最後の挨拶で金沢学院大学学長の秋山稔さんが「観光客に金沢の印象を聞いたら、兼六園、21世紀美術館でもなく、一言『おいしい』だった」と言っていたのが印象に残っている。