鼠多門(1)の続きで、渡櫓の正面の門は現在ある金沢城の他の三御門に比べると、かなり違う点がある。瓦の下には銅板が貼ってあるのは同じだが、桟梁の下に肘木がある。その下の門や側面はケヤキの板に鉄板が貼られ補強され、見た目にも頑丈そうだ。
ここの門は、屋根を支える細い「樽木」があり、その下に太い「腕木」でささえられているが、その間は漆喰が塗られているだけである。
他の三御門(石川門、河北門、橋爪門)は腕木の間に等間隔に湾曲した「支輪」という化粧板が冠木と床梁を結んで強固にしていて、格式が高い門ということである。一般的には社寺で使われるが城郭では珍しいらしく、これは金沢城の門の特徴のひとつだという。
橋爪門の椀木と支輪
石川門の椀木と支輪
門扉は四方の枠に縦格子をはめ込み、横に貫を通して固定し、表面に厚い板を張ったものである。また、その表面に薄い鉄板を鋲でとめている。そして門扉は肘壺と呼ばれる金具(今でいう蝶番)を用いて鏡柱に吊られている。鏡柱には肘金を背面から打ち込んで貫通させ、側面から目釘を打ち、その先端を乳金具で隠す。門扉の裏側には、門を閉めるためのに閂が利用されるが、そのために鎹が取り付けられている。これを隠すための乳金物が門扉の中央に打たれている。
門の中はすべてケヤキで、天井には何本もの梁が縦横に張られ、その下に非常に太い梁や柱が組まれている。
ケヤキの木目がはっきりわかり、これがまた美しく見える。
柱の穴にはめ込まれた貫にくさびが打ち込まれているが、これは経年変化による木材のひずみを吸収するようにするためか?