「禄剛埼」から外浦に輪島方向に走ると、日本海の景色が素晴らしいところがあちこちにある。30年以上前に行ったことがある「木浦キャンプ場」を超えてさらに進み 、ゴジラ岩が見えるところを超えて左手の高台を上がると「旧西部小学校」がある。そこの体育館を改修して、今回の国際芸術祭のために「珠洲シアターミュージアム 光の方舟」を作った。
田の神祭り(あえのこと)は奥能登に伝わる農耕行事である。年の暮れに田の神を迎えてねぎらい「ごちそうはたんとあります。ごゆりと召し上がってくださんせ」とごちそうを出し、2月にたんぼに送り出し豊作を願う言葉を述べるという。その時に使われる赤い御膳であろう。
「よばれ」と呼ばれる祝いの時に使われる赤い御膳がたくさん置かれていた。この赤い器にお酒やご馳走が並び多くの人にふるまわれる、この辺りの行事の一つだ。
恵まれた自然環境と多くの伝統文化を持ち合わせていた珠洲市民の「大蔵ざらえ」によって集められた農耕具とそれらの保管された納屋・蔵に興味を持った作者は、何かに使われてきた農耕具が先人たちの結晶にも思え、欠けや割れ、傷跡がある道具に対して金属を這わせ、新たな景色を作り、未来へ向かうきっかけとして美しさや価値を引き継ぎたいという思いで作った。