2022年10月19日水曜日

谷口吉郎・吉生建築館 木で創る

久しぶりに寺町にある「 谷口吉郎・吉生建築館」に行った。3年前にこの建物ができて、その直後に行ったはずであるから3年ぶりである。



















今回のテーマは「木で創る」である。日本建築はもともと木造建築であったが、近年は鉄筋やRC構造の建物が流行った。しかしやはり古来の木造建築が見直されている。


















木材という概念が変わってきている。木材を加工し組み立て金物を使って補強する木造建築物に加えて、木質材料と鉄、コンクリート、繊維などを組み合わせた構造で材料を使い、強度を確保しながら木の風合いを楽しむ木質ハイブリッド建築が脚光を浴びている。木質材料においてもCLT(クロスラ・ミネーテッド・ティンバー)があたしく注目を浴びるようなった。木の繊維方向にそろえた板をクロスさせて重ね合わせ、接着剤で圧縮した木材である。


帝人(株)が開発したLIVELY WOODは炭素繊維を集成材の間に挟み高い強度を実現した複合材である。木材が持つ軽量性、断熱性能といった長所を維持したまま剛性、耐久性を格段に向上させた建築材料である。


















下図は将来、高さ350mの木造高層建築は、ハイブリッド構造で、木材と鋼材を組み合わせた柱・梁などに使い、またブレースチューブ構造で雨や風などにって変形することを防ぐ。木材には国産の集成材を用い、鋼材部分が目立たないデザインし、木材独特の温もり感を出している。これが「住友林業」が2041年に目指す研究技術開発構想である。


































集成材により、断面の大きな無垢材を入手するのが困難の中で、大断面のものや湾曲部材やスパンの長い架構などが可能となり、大空間を持つ建築物や木質ドームなどが建設されるようになった。環境的な面からも木造の価値を見直す風潮が後押ししているという。



















金沢駅にある「鼓門」は、金沢の伝統芸能「加賀宝生」の鼓をモチーフとした木造建築物で、金沢のアイコンとなっている。鼓を連想させる形状の組柱が2本立ち、その上に湾曲した門を形成している。組柱はそれぞれ24本の斜めに傾いた柱は、2重の楕円形の配置し、外側の楕円の上に配置した12本の柱と、内側に配置した12本の柱は傾きが逆になっており,全体として地震力に抵抗する構成になっているという。斜めに傾いた柱を固定しているため、柱頭部に頭繋ぎの梁を配置し、この頭繋ぎの梁の重なりが全体として水平トラスを構成し、安定した構造体になっている。構造体にはベイマツの集成材が使用され、もてなしドームのアルミ合金やガラスとのコントラストを生み出している。












2005年に1時間耐火部材を用いた木質ハイブリッド構造の5階建ての「金沢エムビル」が初の都市木造として建設された。角型・平型の木質ハイブリッド集成材を採用した日本で初めての事例であり、集成木材以外の耐火被覆材性は一切使用せず、耐火性能を確保した。

































火事に対して弱かった木造建築だが、最近は耐火性能を持った木造の技術開発が進んでいる。



























建物の2階に上がると、前回にも見た「谷口吉郎」が設計したという「赤坂離宮」の和館の中の座敷広間がある。

































この部屋の前には、浅く水がはられ、奥に木々が植えられているが、少し紅葉していて見ごたえがある。以前来たときは、木々がびっしり植えられていて向こうの景色が見えなかったが、今は木々が少し間引きされていて、わずかに金沢の街並みが見えるようになった。
































さらに奥には「遊心亭」茶室がある。中央にある4畳半の畳席と、2辺に配された椅子席からなる谷口吉郎創案の茶室で、能舞台のように設けられた小間での点前を、廻りの椅子から鑑賞しながら茶を楽しむことができる。






















 




天井には平天井と傾斜天井を組み合わせた掛け込み天井や木板を編んだ網代天井などが組み合わされている。