今回は、日本海側初の国立美術館となる「国立工芸館」が10月25日にオープンし、その直後の29日に是非行って見たいと思い行ってきた。コロナの関係で事前予約制となっているので、ネットで予約していった。9時30分の予約で、少し前に行ったが、すでに多くの人が並んでいた。
正式名称は東京国立近代美術館工芸館で、東京文京区にある建物は「旧近衛師団司令部庁舎」で、戦前の軍の司令部として使われたものだが、ここの建物も洋風の軍の施設で「旧陸軍第九師団司令部庁舎」と「金沢偕行社」を復元して利用されている。
10月25日から来年1月11日までは石川移転開館記念1「匠の技術 素材・わざ・風土」が開催され、近代日本工芸の名作約130点が展示されている。
中に入るとすぐ前に象徴となる大きな陶芸のオブジェが置かれていた。米国在住の金子潤さんの作品で、DAIGOというシリーズのひとつだという。これは金沢の風土を表し、細かいストライブは雨で、上の丸い濃い紺色は空の色を写して雨雲にも、青空にも、陽ざしの向きで色合いが変わるという。
入ってすぐの所に工芸作品の映像が何点か写されていたが、それを手(手袋をして)でタッチすると作品の作者名、作品名、説明書きや技法までが出てきた。また他でもバーコードにスマホをかざすと、スマホに同じように作品の説明が出てきた。最近の美術館もデジタル技術を駆使している。
まず、「板谷波山」の「永華彩磁唐花文花瓶」緻密な薄肉彫りの凹凸に沿って、虹色のグラデーションをほどこされている。釉薬の下の素地に液体顔料を浸み込ませ、高温焼成によって鮮やかに発色させているという。よく見るとガラス質の被膜の中に白い斑点ができているが、これを釉中に微細の気泡を生じさせる霜降り状態にした結晶で、これを「水に華」と波山は名付けているという。
このグラデーションは絵付けでなく、器体の構造そのもの、轆轤を用いて粘土板を球状に伸ばす成形や、乾燥の工程で表面ににひびが入る。焼き物の世界では欠点とされる「傷」を文様としたところが面白い。その手触りは珊瑚のようで、高温で焼き締めているので非常に硬いという。
右の方にある金色のひものような3つのものは「みづはのめ」といい、日本の神話に登場する水の女神である。3代宮田藍堂は、郷里佐渡島に伝わる蝋型鋳造の技術を継承し、現在において捉えなおして制作を行ったという。手の中で温めて蝋を自在に操り、それを装身具とした。
黒田辰秋の燿貝螺鈿飾箱
燿貝とはメキシコ産の鮑のことだ。青味と緑を帯びた二つの色合いを生かして長方形の縁を面取りし、市松状にに貼ってある。