2020年11月10日火曜日

国立工芸館(2)

 国立工芸館」(1)の続きで、さらに素晴らしい工芸品を鑑賞した。

小森邦衛の曲輪造籃胎喰籠

伝統的な籃胎漆器は、素地に用いられ竹は漆で塗りこめられていて表から見えないことが多いが、作者は自身で編んだ細い竹の網代が見えるように漆を塗り、編目の模様を生かしている。金色の線と色が下から上に向かって明るくしている。




















赤地友哉の曲輪造彩紅盛器
黒と朱の漆で交互に塗った円の形状とコントラストが特徴の作品である。作者は檜物の技を用いて独自の曲輪造による漆器制作をはじめ変形しにくい曲輪の構造をそのまま模様を生かして、機能と装飾を合致させている。




















江里佐代子の「載金六角組飾筥 六花集香」
厚みを持たせた金銀の箔を切って膠で貼る截金の手法で装飾した作品。金の花模様や神代杉の木目の美しさと截金が見事にあう。 












工芸館の2階へ上がるには、「旧陸軍第九師団司令部庁舎」当時の階段を使う。洋風のクラシカルな雰囲気の階段である。





























2階に上がるとすぐ前に「松田権六」の仕事場が、東京・文京区からここに移転された。「松田権六」(1896~1980年)は蒔絵の巨匠で、この3畳くらいの狭い部屋で、日本古来の美をかみ砕き、目の前の作品に没頭していたと思うと感慨深いものがある。畳は2畳だけで、そこに長く座って作業に没頭し続けていたのだろう。板の間の部分には蒔絵のための材料や道具などがガラスケースや棚にぎっしり置かれ、これらは手の届く範囲にあった。作業台横には漆の仕事には欠かせない温度計が掛けられていた。


「松田権六」は漆を極めた美の巨匠といわれ、「蒔絵」の人間国宝で文化勲章も受賞している。文化財の修復にも貢献していて、奈良の正倉院にある古い漆の作品の調査・修復や中尊寺金色堂の修復もした。輪島漆芸研修所の設立に尽くし、多くの坂を育てている。





「ふるさと偉人伝」より


















松田権六の「蒔絵螺鈿有職文筥」
有職文とは、平安時代以降公家の装束や調度、邸宅内部などの装飾に用いられた文様のことで、古来から日本の工芸で継承されてきた。蓋の二面に施された図案は正倉院宝物の木造紫檀琵琶の裏側にある。松田権六はそれを多種多様な蒔絵技法に翻案して蒔絵作品としたという。





















七代錦光山宗兵衛
上絵金彩花鳥図蓋付飾壺



















初代宮川香山
鳩桜庭花図高浮彫花瓶
モズの巣を覗く鳩。自分より何倍も大きな侵入者に1羽のひなが身を乗り出して向き合っている。鳩や花などが花瓶の周りに異様に盛り上がっている。明治前期はリアリズムを追求した高浮彫作品が海外に高い評価を得たという。