今回は、浅野川沿いの東山付近の桜を見た。ちょうど満開といってもよさそうだ。今年は、開花宣言されてから寒さがぶり返したので、桜の咲いているのが長い。
浅野川を、泉鏡花は「由縁(ゆかり)の女」に女川と称し「みずは柔らかくきれいで、流が優しく瀬も荒れない」と描いている。
並木町から見ると、卯辰山の中腹に「松魚亭」や「六角堂」の建物が見える。10代のころ、この辺りに友人がいてよく来たが、今は様子がすっかり変わってしまった。彼の家の庭から川へ下りられることができたことを思い出す。
「梅の橋」から「大橋」方向を見ると、右側の「東山」方面は桜並木になっていて見事に咲いている。河原の道路に沿った場所に半円の平たい部分に石が置かれ、一服する場所があった。そこの階段を下りると水際まで行けるようになっていた。昔は、この辺りに冬場の冷たい時期に川の中に入って「友禅流し」を見たのも懐かしい。
ここを見る限り満開状態である。
さらに「東山緑地」からの「浅野川大橋」と桜は絵になる所である。この大橋は、市電を通すために大正11年に竣工しているから、もう103年にもなるアーチ状の立派な石橋である。
「梅の橋」付近には、最近よくテレビでも見る黄色の「菜の花」と白い桜のコラボである。
「新金沢小景」より
この「七つ橋めぐり」にはいくつかの決まりがあるという。一つの橋を渡る前後に合掌をすること、一筆書きのようにして回り同じ橋を渡らないこと、決して後ろを振り返らないこと、これらを守れば、下の病気にかからないで済むとされる。
「新金沢小景」より
「梅の橋」から「天神橋」方面を見ると、浅野川の穏やかな流れと、子供のころによく上がった親しみのある「卯辰山」が見える。この辺りの風景は、京都の東山に似ているから、その名が付いたと聞いたことがある。泉鏡花や徳田秋声の作品の中にもよく出てくる。