2025年4月9日水曜日

浅野川 東山付近の桜

 今回は、浅野川沿いの東山付近の桜を見た。ちょうど満開といってもよさそうだ。今年は、開花宣言されてから寒さがぶり返したので、桜の咲いているのが長い。

浅野川を、泉鏡花は「由縁(ゆかり)の女」に女川と称し「みずは柔らかくきれいで、流が優しく瀬も荒れない」と描いている。



















並木町から見ると、卯辰山の中腹に「松魚亭」や「六角堂」の建物が見える。10代のころ、この辺りに友人がいてよく来たが、今は様子がすっかり変わってしまった。彼の家の庭から川へ下りられることができたことを思い出す。




















「梅の橋」から「大橋」方向を見ると、右側の「東山」方面は桜並木になっていて見事に咲いている。河原の道路に沿った場所に半円の平たい部分に石が置かれ、一服する場所があった。そこの階段を下りると水際まで行けるようになっていた。昔は、この辺りに冬場の冷たい時期に川の中に入って「友禅流し」を見たのも懐かしい。


















「梅の橋」の突き当りには、門の中に立派な赤松が伸びていたが、これは藩政期には武士の家だったのか?
























ここを見る限り満開状態である。


















さらに「東山緑地」からの「浅野川大橋」と桜は絵になる所である。この大橋は、市電を通すために大正11年に竣工しているから、もう103年にもなるアーチ状の立派な石橋である。


















「梅の橋」付近には、最近よくテレビでも見る黄色の「菜の花」と白い桜のコラボである。


















「梅の橋」の向こう側には、鉄橋の「天神橋」が見える。この二つの橋を入れて浅野川の「七つ橋めぐり」という行事が、昔からある。春と秋の中日に真夜中の十二時になるとどこからともなくやってきた人たちが浅野川に架かる橋を渡り始める。数珠を持った人たちが、沈黙の行列となって、常盤橋、天神橋、梅の橋、浅野川大橋、中の橋、小橋、昌永橋を渡りきる。





















「新金沢小景」より















この「七つ橋めぐり」にはいくつかの決まりがあるという。一つの橋を渡る前後に合掌をすること、一筆書きのようにして回り同じ橋を渡らないこと、決して後ろを振り返らないこと、これらを守れば、下の病気にかからないで済むとされる。







「新金沢小景」より











「梅の橋」から「天神橋」方面を見ると、浅野川の穏やかな流れと、子供のころによく上がった親しみのある「卯辰山」が見える。この辺りの風景は、京都の東山に似ているから、その名が付いたと聞いたことがある。泉鏡花や徳田秋声の作品の中にもよく出てくる。